■超適当にやってようぜ
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都市伝説

ここ数日ネットで怪談や都市伝説のたぐいを探して読みあさっています。

もともと俺はあの手の怖い話はそれほど興味がなかった。子供の頃は人一倍臆病で、一人で寝るのが怖くて親の寝床に助けを求めたり、やたらと超自然的なものを恐れていたのだが、正確には覚えていないがある時期を境にぱったりとその手のものが怖くなくなり、興味も失ってしまった。おそらく精神の成長につれて自分の中で思想体系が固まってきて、唯物論的な考えで統合されてきたからだと思う。世の中はつまらないくらいに物理的な相互作用で動いていて、本当に怖いものは幽霊でもお化けでもなく、人間自身であるという考えが固まってしまったのだ。そういう俺が「怖い話をしてくれ」と言われてするのは決まって、

「これは実話なんだけど。俺は大学の時に、夏休みに3泊4日でサークルの合宿にでかけることになった。一人暮らしだったので何日かアパートを無人にすることに多少の不安はあったが、向こうに着くとその楽しさと解放感にそのことはすっかり忘れてしまった。

楽しい合宿の日々は過ぎ去り、数日ぶりに無人のアパートに帰ってきた。友人とも別れ、大きな荷物を抱えてアパートの前にたどり着く。ふと、出かける前の家を空ける不安を思い出すが、特に火事で燃えることもなくアパートは存在している。そして鍵をあけ、ドアを開けてみて俺はあまりの恐怖に凍りついた。

なんと、部屋が涼しいのである。
夏に閉めきっていたいたはずの部屋がひんやりと快適に涼しい。つまり、俺は合宿に行く前に冷房をつけ、そのままこの4日間部屋を冷やしっぱなしだったのだ!来月の電気代が怖い…。」


などというくだらねー小話だった。(しかしそのときは本当に怖かったのだ!)つまり、そういう物質的な恐怖くらいしか怖さを感じなかったし興味もなかったのだ。暗闇もどちらかというと好きな方でまったく恐怖を感じず、夜中暗い道をたった一人で歩いていると怖いどころかなんだか世界に俺一人しかいない気がして、むしろ妙にうれしくなって興奮してくるくらいだった。

そんな怪談話に関心がなかった俺ですが、最近になって流行っている怖い話を偶然読んでみるとこれがちょっと路線が違っていて面白い。怪談と言うよりむしろ都市伝説系が多く、理由も分からないけどなぜかぞっとするという話がたくさんある。

例を挙げると、(かなり有名なので聞く方もウンザリだろうが)女の子の家に泊まりにいった友達が寝ようとした直後に突然買い物に行こうと言い出して、無理矢理女の子と一緒に家から出る。外に出てから事情を話すと実は女の子のベッドの下に包丁を持った男が隠れていたのが、床に寝ていた友達から見えていたという話。

別に幽霊やお化けがでてくるわけじゃないが不思議とぞっとする。こういう話を「何故ぞっとするのか」という観点でみていくのは非常に面白くて、つい読んでしまう。幽霊が出てきてどうこうという恐怖ではなくて、なにか人間が無意識に持っている、先祖代々人として受け継いできた根元的な恐怖がこういう話によって部分的にふと呼び覚まされている気がする。

自分のテリトリーとして安心している場所が同時に恐ろしい場所であることに突然気づいた恐怖だとか、誰もいないはずのところに誰かがいた恐怖だとか、信じ切っていた人がふと気づくと実は「向こう側」の人だったとか、現代的な常識や価値観の通用しない閉鎖された地域の異常性だとか、自分の中に自分以外のコントロールできない何かが存在している恐怖だとか、誰の心にも眠っている人間の差別心の残忍さにふと気づいたときだとか、人間が人間として本来想定していないような動作・造形・スピードで近づいてくる恐怖だとか。

久々にこういう現実ではないことでぞっとする経験をするのがなんだか新鮮だったりして。こういう感覚、まだ残っていたんだな。人間の心理って普段考えていないようなことも実はたくさん埋まっていたりして、面白いです。


2002年11月05日08時09分

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