セミ・リタイヤの破綻

大橋巨泉の民主党からの立候補というのも面白いですな。あれこそ、まさに彼が偉そうに語っていた「セミリタイア理論」の破綻を、自ら露呈してしまったといういい例です。そもそも彼がセミ・リタイヤ後もちょこちょこTVに出てきて、たけしや石坂浩二に偉そうな事を言ってるのを見ては
「お前リタイヤしたんだったら出てくんな。出てくるんなら最初からリタイヤすんな」
と俺は思っていたのですが、これで彼の「セミ・リタイヤ」が完全に崩壊してしまったのは言うまでもないですね。

結局「人はパンのみにて生くるにあらず」とはよく言ったもので、人というものは個人差もあるでしょうが衣食住すべて用意してもらって、適当なメスとセックスして毎日ぼんやりと生きていればそれで満足かというとそんなわけはないのであります。やはり気力、体力が充実していればそれなりに世間との関わり合いを持ちたい、何かに口を出したい、何かを作りたい、名を知らしめたいという欲望が出てくるのは当然のこと。確かにあくせくと忙しく働いている間は「あー、宝くじでも当てて一生だらだら暮らしてー」などとダメ人間的なことをみんな思うんですが、いざ本当にそういう状況になって実際にセミリタイア生活に入ってしまうと、まあ何もせずにダラダラできるのなんて最初のうちだけで、数年もすれば結局また何かやりたくてウズウズしてしまうものなのです。意外とみんな自分で思うほどダメ人間じゃないんですよ。

実際胡散臭い商売でさんざん儲けた人で、実際もう一生働かなくてもいいくらいの金は余裕で稼いでいて、本人も「もう金儲けはいいや」などと言って田舎に引っ込んでのんびりと暮らし始めるのですが、数年たつとだんだんそんな平穏な生活にも飽きてきてまた新しい商売を始めるというのを何度も見たことがあります。で、それで前に儲けた稼ぎをたいがい吐き出してしまうという救われない繰り返しなんですけどね。

まあ中には本当になにもせずにのんびりと平穏無事に暮らしたい人もいるんでしょうが、悲しいかなセミ・リタイヤというのは結構元手がかかるもので(今ちょっと調べたら、持ち家+100万ドル+何らかの投資は必要とされてるらしい)、そういう元々あまり欲のない人間はセミ・リタイヤに移行するだけの金は稼げない(やっと稼いだ頃には既に「セミ」のつかないただの「リタイヤ」だったりする)。
逆にそれだけの金を稼げるバイタリティや欲望の強い人間は、人より先にセミ・リタイヤしてもそのバイタリティ故にいずれまた現役に戻ってきてしまう。セミ・リタイヤ理論はこういった致命的なジレンマをかかえているんですな。

今回の立候補に関して、巨泉もなんだか「小泉政権の熱狂に危機感を感じて」などと偉そうな大義名分を吐いてますが、よく耳をすましてみると、彼の本音の
「まだまだ俺は注目されたい!活躍したい!こんな田舎に死ぬまで引っ込んでいたくない!俺はまだまだやれるんだ!」
っていう心の叫びが聞こえてきて結構泣けます。「セミ・リタイヤ理論」自体はじめて聞いたときからうさんくさい、すぐに破綻する理論だとは思っていたけど、主張していた彼自身が自ら功名心に駆られてぶちこわしてくれるとは滑稽の極みですね。

で、巨泉に入れる人っているの?
2001年07月13日05時13分


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